油絵のレッスンを始めるときはまずは静物画から始めるのが良いです。
何故なら構図や物の質感、空間を認識すること、絵としての全体のバランスを考えることなど勉強になることばかりだからです。
そこでこのブログでは初心者の方が油絵で失敗なく静物画を描くときの順番とポイントをわかりやすく解説します。
同じ内容のユーチューブもあります(記事一番下)ので両方ご覧になって理解を深めて頂けたらと思います。
今回ユーチューブ画面をキャプチャーして解説しています。
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油絵 静物画の描き方 構図を決める
初心者の方が油絵で静物画を描くときにはともかくもまずは構図を決めなければなりません。
そこで何を描くか?というところでまずは迷うのですが物選びのポイントは
・異なる質感、色味、かたちのもの組み合わせるということです。
自然のものと人工物を組み合わせる、という考え方でも良いです。
これは静物画に限らず風景画でも言えることです。
油絵というのは変化が大事ですね。
ここでは丸いかたちの果物、硬い貝、金属のポット、ガラス瓶、ナイフ、布、、を選んでみました。
そしてそれらを組み合わせて安定感のある構図を考えてみましょう。
ここでは楕円形構図と三角形構図を組み合わせたような感じの静物画になっています。
人の目線は左上から右下に移動しますので最終地点の右下に大きくて重いものを持ってくると構図が安定します。
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油絵で静物画を描き始める前にモチーフの写真を撮る
勿論実物を見て描くのが理想ですがデッサンの経験のない初心者の方がいきなり3次元の空間を2次元の平面に置き換えるのはかなりハードルが高いです。
なのでここではまず油絵で静物画を描き始める前にモチーフの写真を撮ってみましょう。
すると2次元の平面から2次元の平面に置き換える作業になるので初心者の方にはぐっとハードルが下がります。
但し写真は縦線が少し斜めになるのでそこは修正するようにします。
写真に縦横のアタリの線を引き、キャンバスにも同じようにアタリの線を引きます。
4等分、6等分、8等分など好きなように写真の画面を分割してキャンバスにも同様の線を引きます。
そして部分的に同じように拡大していきます。
油絵の下書きは木炭で描くこともありますがここでは濃い目のB系の鉛筆でうすく軽く書いています。
鉛筆の線はそのうち消えていきますが濃く描いてしまうとなかなか消えないこともあります。
上の写真は大体のかたちをとったところです。
ポイントその1 この段階では細部に捉われることなくおおまかなかたちを捉えるようにする
油絵 静物画の描き方 下描き
大体の形をキャンバス上に描いたら下書きとして「おつゆ描き」をしていきます。
油は揮発性のテレピン油を使います。
ここではまだ詳しく描きこむことはせずに薄く全体に下塗りをします。
油絵の具の必要な色をパレットにだしてテレピン油で絵の具を薄く溶きます。
そしてわりと大き目の筆の腹の部分でざっと全体的に薄く塗っていきます。
キャンバスの白いところが無くなるように、、といった意識で。
下書きで色を塗るときは明るめの色から塗っていきます。
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*カマイユ技法では陰の部分から描いていきます。
*陰影という言葉がありますが物に光があたっている反対側の暗くなっているところを「陰」といい、「影」と区別します。
(本描きでは陰色から塗っていきます)
この時バックは初心者の場合「何も描かない」ことにします。
ここで背景のごちゃごちゃしたものまで描いていたら初心者の場合はちょっと情報量多すぎ、、ということになります。
なので背景は「バック」と割り切って縦の筆触(ストローク)でざっと塗っておきます。
壁紙みたいなのを想定して塗ると良いです。
*背景が広く空くような構図では物の「影」が空きの部分を補ってくれることがあります。
ポイントその2 初心者が油絵で静物画を描く時の背景はシンプルに
基本初心者の場合床やテーブルは横の筆触(ストローク)、壁など縦の面は縦の大きなストロークで塗ります。
すると縦の面と横の平面との違いが出ます。
空や地面を塗るときも基本横の大きな筆触で塗ります。
*瓶などの縦長モチーフがあるときは縦の筆触が目立たないほうが良いです。
ここまででかかった時間が約2時間ちょっとです。
油絵 静物画の描き方 陰色をつけていく
レモンと洋梨の陰色の作り方描き方
一応おおまかにベースになる色を塗ったら2日間くらい乾燥させます。
通常乾性油で描いた場合は乾燥に4日間くらいみておいたほうが良いのですが下書きの場合は揮発性油で乾燥が速いので2日間くらいで良いと思います。
*油彩・アクリル兼用キャンバスを使っていればこの下塗り(下書き)のおつゆ描きはアクリル絵の具でやっても良いです。
アクリルは乾きが速いのでその日のうちに油絵の具の本描きに入ることが出来ます。
*油絵の具の上からアクリル絵の具を重ねることはできません。
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油絵の工程:下塗りから仕上げまで一般的な方法を初心者にわかりやすく
油絵の具の乾燥時間は季節によっても違ってきます。
夏場は速く、冬場は遅くなります。(特に乾性油)
下塗りが乾いたら次はモチーフの陰の部分を描いていきます。
2日目からペインティングオイルを使います。
このペインティングオイルというのは初心者には一番無難で失敗のないオイルです。
2日目から本描きですが最初の頃はこのペインティングオイルに揮発性のテレピンを混ぜたような描き方をします。
オイルを少し薄める感じです。
完成に近づくにつれて乾性油の割合を多くしていきますが初心者の方は2日目からもっぱらペインティングオイル、と思っておかれても結構です。
油絵の静物画の本描きはまずモチーフの陰の暗い部分から捉えるという描き方をします。
前回の下塗りは「塗る」という感じでしたが今回からはモチーフをよく見て「描く」という意識でやっていきましょう。
「陰」は反射光を考えたような描き方をします。
トマトやレモンも球体の変形という考え方で描いていきます。
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油絵の静物画では陰色はモチーフの色よりも若干彩度の低い色を塗りますがその陰色の作り方は色々あります。
物の陰の部分はグレーっぽく見えますが陰色というのはグレーと限ったことではありません。
ここでは色相環の反対側の色(補色)を混ぜた色をまずは作ります。
例えば黄色の陰色を作りたいと思ったら単純に言えば黄色の反対側にある補色である紫を混ぜた色、ということになります。
*ここでは紫はクリムゾンレーキとウルトラマリンを混ぜて作り出しています。
*なるべく初心者の方の為にホルベイン12色セットで描けるように考えています。
これは黄土色に近いような色になりますが実際はテーブルからの光の反射などもありますのでこれにグレーを混ぜたような色になります。
ここでは
レモンの陰色=グレー+(黄色+補色の紫)として塗っています。
他の部分も同様な感じで陰色を作って塗っていきます。
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陰色はそのものの表面に沿った筆触で描いていきます。
筆でうまくぼかすことができなかったら柔らかい布で拭きながらぼかすこともできます。
ぼかし筆でぼかしても良いです。
油絵は何でもできるので面白いですね。
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洋梨も形に添って陰の様子を捉えていきます。
洋梨もイエロー系ですので陰色には補色の紫を薄く使います。
ぼかし筆ではなく普通の丸筆でぼかしても良いですね。
油絵の良いところはぼかしがやりやすいというところです。
貝とポットの描き方
貝の色をもっと詳しく塗っていきます。
貝は真っ白ではなく下のほうはホワイトに少しバーントシエナを混ぜたような色をしています。
この時点では多少はみだしてもそう気にせずに貝の形に添って塗っていきます。
塗るとパレットで見るよりは薄い感じがします。
この時点で下書きの鉛筆の線は完全に消えるようにします。
消えなかった場合は一度イエローオーカーのような不透明な色を塗って乾かしてみます。
もしくはチタニウムホワイトを使うという描き方をすれば鉛筆の線は消えます。
ポットの上の楕円はきれいな楕円になるような描き方をします。
ポットの中にも楕円がありますが外側の線と続くように注意します。
ポットの内側の陰の様子も捉えていきます。
初心者の方が一発できれいな楕円を描くことは難しいのでああでもないこうでもないと修正しながら、、といった描き方をします。
貝の内側の陰の部分はパープル(クリムゾンレーキ+ウルトラマリンブルー)とグレー、バーントシエナを混ぜた色で塗ります。
油絵 静物画の描き方 モチーフの影を描いていく
ウルトラマリンブルーとコバルトブルーを混ぜた色で今度はモチーフの「影」を描いていきます。
油絵に限らず西洋絵画ではものの輪郭線といのはあってないようなものでこの影を描くことによって輪郭線が決まっていく、という描き方をします。
ポイントその3 陰影で形を捉えていく
テーブルの部分もブルー1色ではありません。
暗い部分とか明るい部分とか中間の部分とかを描き分けるようにします。
油絵 静物画の描き方 固有色を塗っていく
この辺からモチーフの固有色を塗っていきます。
まずはトマトですが下地のイエローを残すような感じで上のオレンジ色を塗っていきます。
このトマトの色はいきなりバーミリオンなどを塗るのではなく
クリムゾンレーキとパーマネントイエローライトを混ぜた色にします。
赤みの強い部分はクリムゾンレーキの量を増やすようにします。
トマトの丸みに沿ってこの色を被せる、というような描き方をします。
洋梨もその凸凹した形に添って洋梨の固有色を塗っていきます。
ここではイエロー、クリムゾンレーキ+ウルトラマリンブルー=パープル、パーマネントグリーンペールを使って陰をよりリアルに捉えるような描き方をしています。
ここでレモンにパーマネントイエローライトをそのままのせてみます。
ポットは金属の質感を思いながらシュパンと直線的に塗っていきます。
ここではパーマネントイエローライトにホワイトを少し混ぜています。
ビンはガラスの映り込みを描くつもりで描いていきます。
ラベルやコルクの部分も描いておきます。
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ここまで描いたら4日ほど乾燥させます。
もしも初心者の方で教室に通ってある方だったら週1回とか月2回とかのペースで描かれると思いますので丁度その頃乾いているといった感じですね。
油絵は基本下が乾いてから上を重ねていくという描き方をするのが色が混じって汚くなるのを避ける方法です。
上級になってくるとウエットオンウエットという描き方もアリですが初心者の方はまずはその都度乾かしながら描くのがきれいに仕上がるコツと思います。
油絵 静物画の描き方 背景にパープル系をいれてみる
梨や貝の陰の部分にクリムゾンレーキ+ウルトラマリンブルー=パープルを薄く入れていますのでテーブルや背景にも薄くその色を入れて全体を馴染ませます。
特にテーブルは明るい部分に明るめのパープル(ホワイトを混ぜる)を入れて暗い部分を残すことによって影の部分を表現しています。
静物画に限らず風景画などでも油絵を描くときは前のほうの貝の模様とかナイフとか目立つところを早く描きたいのはぐっと我慢して後ろから塗っていくことが大事です。
ポイント4 初心者の方が油絵で静物画を描くときは後ろから塗っていく
油絵 静物画の描き方 さらに描きこんでいく
ポットの取っ手、細部の描きこみ
テーブルの部分が描けたのでここで初めてポットの取っ手の部分を描きます。
取っ手の部分は黒ですがいきなり黒をどっと塗るのではなくて濃い目のグレーとかで攻めていきます。
ポットの楕円の形というのは狂いがちなのでそういうときはキャンバスを逆さまにすると狂いが分かり易いです。
そうやって修正しながら形を整えていきます。
ここまでくるとオイルを使わずにそのまま塗ることもあります。
仕上げに近づくに従って絵の具は濃い目、という描き方をします。
オイルをつけなかったら擦れたりするのですがそれがまた油絵の良さだと思います。
ポットの内側のグレーはあまりはっきりとしないように、乾いた上からホワイトを被せたりします。
基本向こう側にあるものはコントラストを弱く、さりげなくします。
(手を抜くという意味ではありません)
近くにあるものはコントラストを強くはっきりさせます。
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さらに取っ手の細部なども描きこんでいきます。
さらにポットの表面の深い陰の色を入れていきます。
そのあと中間の陰の部分を被せていきます。
ポットの注ぎ口の先のほうもこの時点で決めていきます。
向こう側にあるものなのでそうきっちり描かなくても大体の形を捉えてみます。
ビンの描きこみ
ここでビンの質感を表現します。
静物画の中のガラスは透けていたり写りこんでいたり、というのを描き分けないといけません。
初心者の方がガラスの透け感をだすには向こう側を描くことこと以外にありません。
ここではテーブルの青が透けて見えているような描き方をします。
その部分はビリジアンヒュー+ウルトラマリンブルーの濃い目の青緑で表現します。
またガラスは光の屈折の感じなんかを描くとそれらしくなります。
ビンのグレーの筒の部分は反射光があるので端から少し入ったところが一番暗くなります。
この部分に限らず全て反射光を意識して描いていくようにしましょう。
貝の内側の描きこみ
貝の内側の様子も描いておきます。
貝の内側を描いていたらトマトのほうにはみだしたりしますがトマトの表面が乾いていればはみだした部分は拭き取れば良いのです。
こういうことが出来るのが油絵の良いところです。
トマトの固有色をグレージング技法で描きこみ
トマトやナイフも更に固有色を塗っていきます。
トマトは下に明るいイエローを塗っていますので上はグレージングで下の色が透けて見えるような描き方をします。
クリムゾンレーキ+イエローをオイルで薄く溶いて被せていきます。
そういう透明感が出せるのも油絵の面白いところですね。
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さらにトマトの暗いところを描いていきます。
トマトの描き方に関しては
下記ブログをご覧ください。
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貝の模様の描きこみ
ここまできたらいよいよ貝の模様を描いていきます。
この貝の模様がこの絵の見せ場みたいなものなんですね。
この模様が貝の表面を表わします。
色はバーントシエナ+ホワイトです。
下に回り込んだ感じを出すことが大切です。
この模様は難しいですが頑張ってリアルに描いてみましょう。
模様を描いたらそのあとそれを修正するようなつもりで貝の白っぽい色を乗せていきます。
貝の黒っぽい色のところも黒を入れるのではなく、クリムゾンレーキ+ウルトラマリンブルーの濃い紫にバーントアンバーを少し加えた暗めの色合いにします。
ここでまた4日ほど乾かします
油絵 静物画の描き方 さらに描きこみ
前回までで大体個別には描いたのですがまだ物と物との関係性が描けてないのでここではそういうことを意識しながら更に個々も描きこんでいきます。
重なりのところとか前後感などですね。
物そのものもまだ描きこみが足りないのでもう少し描いていきます。
トマトはレモンの影になっている部分を濃くします。
また明るい部分と暗い部分の境目の稜線のところが一番彩度が高くなりますのでそこを鮮やかにします。
ここではクリムゾンレーキを生で被せています。
トマトのヘタの部分も描きこみます。
パーマネントイエローグリーンにホワイトを混ぜたような色合いです。
さらにトマトのハイライトの部分も入れてみます。
どちらから光が当たっているかを意識してすべてのモチーフの光と陰影を統一します。
ナイフの取っ手のこげ茶の部分も上からウルトラマリンブルーをかけると深い色になって全体に馴染みます。
ポイント5 初心者の方が油絵で静物画を描くときはナイフのような直線的な要素が入ると絵が引き締まる
ビンはグリーンを薄くペインティングオイルで溶いてグレージングしていきます。
ラベルの模様などは雰囲気が分かる程度に描きます。
向こう側にあるものなのでそんなに詳しく描きこむ必要はありません。
貝は模様が乾いたら一度上からホワイトを薄くかけると模様が柔らかくなり、更にその上からまた模様を所々に描いていくと深みがでます。
貝の上のほうに更にホワイトを入れて下のほうとの差をつけます。
油絵 静物画の描き方 仕上げ
テーブルの表面の向こう側を更に明るい感じにして背景との色の差を少なくしていきます。
静物画は手前と向こう側の距離はわずかですがそれでも前後感、距離感はだすようにします。
初心者の方が油絵で静物画を描くときはなるべく後ろのほうが主張しないように調整していきます。
ポットの取っ手の金属の質感もだすようにします。
トマトのハイライトの一番明るい部分にさらにパーマネントイエローライトをのせて光を調整します。
レモンにはパーマネントイエローグリーンをちょっと被せて黄緑ぽいレモンらしさをだします。
表面のぶつぶつした感じを思いながら描きます。
一番最後にレモンのハイライトの部分を描きます。
ホワイトが混じると明度は上がりますが彩度は下がります。
ハイライトを入れるときは盛り上げるくらいの厚さで入れて良いです。
まとめとポイントおさらい
■初心者の方が油絵で静物画を描くときはまずはモチーフ選び。コツは違った素材、形のものを揃え、安定した構図を考えること。
■できれば空白の少ないような構図にする。
■初心者の失敗ない静物画の描き方のコツとしてはまずはモチーフを写真に撮る。
■油絵で静物画を描くときはまずテレピン油でおつゆ描きの下書きをする。
■初心者が油絵で静物画を本描きするときの描き方はモチーフの陰影、暗い部分から捉えていく。
■全体にモチーフの光と陰影を統一する。
5つのポイントは、、
1.最初の段階でいきなり細部にこだわらない
2.背景はシンプルにする
3.陰影でかたちを捉えていく
4.後ろから塗っていく
5.直線的な要素を入れ込む
以上参考になれば幸いです。
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