初心者の方が油絵で風景画を描くときはどんなところに注意したらいいのでしょう?
何となく描くよりもこれだけは押さえておきたいコツや注意点を頭に入れてから描き始めるほうが効率的です。
ここではそれらのことをおおまかに7つにまとめて書いてみました。
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油絵 風景画の描き方のコツと注意点 縦横比
広がりを感じる横型の風景画
そもそも風景画を描く時はまず絵を縦型にするか横型にするかを決めなければなりません。
通常は殆ど横型にすることが多いと思います。
横型にする場合は縦横比によって雰囲気が違ってきます。
通常キャンバスはF、P、Mというサイズ(縦横比)の違いがあります。
FはFigure=人物型、、ですがこれを横にして風景を描くことも多いです。
PはPaysage=風景型(これだけが何故かフランス語)
MはMarine=海景型
横にした場合Fが一番縦が長く、F→P→Mと縦が短くなります。
ということはそれだけ横長な感じになるので風景の広がりを出しやすくなる、ということになります。
上の風景画は以前うちの教室に通ってあった生徒さんのふるさとシリーズですがMサイズのキャンバスの横型で描いて街の横の広がりを表現してあります。
緊張感のある縦型の風景画
上の横型が街全体を俯瞰してみた感じを表現してあるのに対してこれはふるさとが海辺の街であることを言う為に縦型にしてあります。
しかもMの縦型なので向こう側の海の情報までかなりわかる感じです。
このように何か意図がある場合は縦型となることが多く、その中の縦線(電柱や樹木など)がアクセントになる場合が多いです。
こういう縦型の風景画は緊張感があります。
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油絵 風景画の描き方のコツ 地平線の位置
次に初心者の方が油絵で風景画の描き方を考えるときに大事なのが地平線の位置です。
この地平線の位置によってその風景画の中で何が言いたいのかが随分と違ったものになってきます。
印象派の画家の中でもシスレーという人は「空」の雄大さと美しさを表現した作品を数多く残しています。
この作品も地平線は画面の下3分の1のところにあって画面の殆どの部分を空が占めています。
雨上がりの夕焼け空の美しさが言いたい、、というのが伝わってきますよね。
同系色で描かれた水への木の映り込みもきれいです。
一方このモネの絵では逆に水平線は画面の上3分の1のところにあります。
モネは光や水、空気の移ろいのようなものを表現したいと思った人です。
この絵では空より水面の光や水の動きが言いたい、ということが分かりますね。
手前に描かれたボートも構図上効果的に使われています。
油絵 風景画の描き方のコツと注意点 モチーフ選び
油絵で風景画の描き方を考えるときに次に悩むのが「モチーフ」です。
何を主役にするのか脇役にするのか?
ヨーロッパでは教会の尖塔が主役になることも多いですね。
キリスト教国ですので街の教会を中心にして人びとが生活していたというのもあるかしれません。
上の作品はアクリル画ですがドイツの教会の尖塔が主要なモチーフとなっています。
手前の外灯は主要な脇役として存在しています。
このマネの「草上の昼食」という絵は風景画というよりは人物画というか風俗画?かもしれませんが主役は手前の人物3人、向こう側の女性や木々はそれを引き立てるための脇役ですね。
3人のなかでも裸の女性が一番の主役ですが肌の明るい暖色が暗い木々の中でひときわ目を引きます。
このドガの絵では手前の馬と人物がメインであとは脇役ですね。
レースにでる馬が出発に失敗した瞬間を捉えています。
これも風景画というよりは人物画に近いのかもしれませんがその「光景」がリアルです。
背景の人物達はさりげなく描かれています。
人の目は詳しく描きこまれたほうにいきます。
またモチーフ選びのコツとしては違った形、質感、色味のものを組み合わせるということです。
静物画と一緒ですね。
人工物、自然物、人間、動物、丸いものと角ばったもの。
暖色系と寒色系。
ここでは人物、馬、木々、人工の柵や建物、縦線、横線が上手く組み合わされています。
色味も色々な色味が使われています。
木々ばかり、人物ばかり、花ばかり、緑ばかり、、といった単調さは初心者の方は避けたいところです。
油絵 風景画の描き方とコツ 遠近法の使い分け
風景画の描き方でとても重要なのが「遠近法」です。
遠近法にも色々ありますがどういう遠近法を使うかというのを意識して描くのが風景画を成功させるコツです。
油絵 風景画の描き方で最も基礎的な「大きさ」
物は当然ながら近くにあるものは大きく、中くらいの距離にあるものは中くらいの大きさ、遠くにあるものは小さく見えます。
これは一般に「近景」「中景」「遠景」と呼ばれています。
しかも近くにあるものは細部まではっきりと見えるのに対して遠くに行くにしたがってしだいにぼーっとしてきます。
写真では意外と遠くにあるものまではっきりと写ってしまうことがあるのですが油絵の風景画の描き方として大事なことは殊更にこの差をはっきりとつけなくては遠くにあるように見えないということです。
絵と写真の違いはここにあります。
初心者の人はつい遠くにあるものまではっきりと描いてしまいがちなのですが人間の目というのははっきり描かれたところにいくものですので基本一番手前のものを大きくはっきり、詳しく描きこむ、という描き方をします。
上は私が樹木の前後感を表わすために描いたものです。
手前にある木はトーンの差が大きく情報量も多いのですが遠くにいくにしたがってトーンの差は小さく情報量も少なくしています。
ですが中級以上になってくると中景にあるものをメインに目立たせる、、といった描き方をすることもあります。
これはうちの生徒さん作品ですがこの絵の場合中景にある遺跡がメインモチーフですので手前の花よりも遺跡のほうをはっきり描いてもらいました。
手前の花はさりげなくあまりめだたないように描かれています。
これでメインのほうに人の目がいきます。
近景、中景、遠景の違いを描き分ける、と言う基礎的なことが出来るようになったらこういうことにも挑戦してみましょう。
油絵風景画の描き方でかなり重要な線遠近法
油絵の風景画で建物の窓を描いていくときや並木を描く時、また部屋の中の奥行を表わすときなどこの線遠近法のことがわかってないとおかしなことになります。
図面で言うと上の図のようになりますがこれはルネッサンスの頃のイタリアで確立された方法です。
中心のイエスのうしろが消失点となって背景は規則正しく描かれています。
初心者の方はこの規則正しく小さく狭くなっていく線遠近法で間違われることが多いです。
一度図面に描いて練習してみましょう。
油絵風景画の描き方で大切な空気遠近法
そもそも風景というのは遠くにいくにしたがって青く見えるという自然現象があります。
イタリア・ミラノではよく霧がかかりますが湿度が高くなるほどこうなりやすいと言われています。
空気遠近法もルネッサンスの頃に確立された方法でミラノ出身のレオナルド・ダ・ビンチはよくこの方法を使っています。
手前ではアンバー系の色に描かれている同じ岩がが向こう側では青っぽく描かれていて明らかに距離が違うことを表わしています。
日本も湿度が高い国ですが富士山が青く見えますよね。
小さい頃私は富士山は青くて素敵だと思っていたのですが近くで見るとごく普通の山だと知ったときはちょっとがっかりしたものです。
が風景画を描くときにこれは大いに利用しましょう。
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油絵風景画の描き方で是非使いたい色彩遠近法
この絵の主役は手前のボートと人物ですね。
もしもこのボートがブルーや紫の寒色で描かれていたらどうでしょうか?
いまいち目立ちませんよね。
暖色と寒色を並べると寒色は沈んで見えるのに対して暖色は飛び出て見えます。
ルノアールのこの絵は主役のボートがひときわ飛び出して見えます。
これを色彩遠近法といいます。
上の「草上の昼食」でも「岩窟の聖母」でも人物の暖色の肌が手前にある感じを強調しています。
空気遠近法で遠くにあるのがブルーに見えるのは偶然それが奥に引っ込んで見えるということと合致していますね。
油絵風景画の描き方で使いやすいカーブ遠近法
油絵に限らず水彩画でも風景画でこのカーブ遠近法という描き方を使うと構図的に絵になり易いというのがあります。
初めての方はこの構図がおすすめです。
こういう風景を探して描いてみましょう。
これに近景、中景、遠景を加えていきます。
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油絵風景画の中で結構よくあるジグザグ遠近法の描き方
油絵の風景画の描き方としてわりとよく使われるのがこのジグザグ遠近法です。
これは水彩画より油絵のほうがやりやすいような気がします。
近くの畝から遠くの畝までの流れを重なるように斜めに描いていきます。
実際の風景がこうなっていることが多いのでそういうところを探してみましょう。
これは私の油絵の風景画ですが一応畝の違いを描いているつもりです。
下の動画も併せてご覧ください ↓ ↓
このジグザグ遠近法は空の雲にも使います。
まず空にジグザグの下書きをしてそれに沿って雲を描いていきます。
空にも遠近法を使うということですね。
勿論手前にある雲は大きく、向こうに行くにしたがって小さくなります。
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油絵の中でたまにある俯瞰して見た風景画の描き方
最初の生徒さん作品もそうでしたが油絵の風景画の中にはたまにこういう上から俯瞰してみたような構図のものがあります。
これは全体を見晴らしていて物語性がありますが、戦争画でもこれが使われることも多かったようです。
この描き方のコツは出来れば遥か遠くまで描くことです。
広々とした大地の広がりと人々の様子を描きたい時はこの描き方が良いですね。
これもメインのモチーフに暖色が使われ、背景は寒色になっています。
ブリューゲルの時代から使われていた遠近法ですね。
油絵 風景画の描き方で注意したい光と陰影
明暗の違いを感じるということは人間の一番原初的な視覚の感覚なので風景画を描くときにはこれはとても重要であると言えます。
この絵も風景というよりは光景ですが外の風景画とは違っているので引用してみます。
風景画の場合はどちらか一方から太陽の光が当たっているものですのでどちらから光が当たってどちらに陰と影ができるのかを明確にするのが成功させるコツです。
ダヴィドのこの絵では室内でナポレオンとジョセフィーヌを中心に光が当たっていて両端や背景が暗くなっています。
こういうドラマチックな演出をした描き方をすることは風景画では滅多になく、光と影は統一されていることが殆どです。
一度描く前に鉛筆でデッサンしてみて光と影を捉えてみたいですね。
印象派の人達は外の光と陰影を追求しました。
勿論光にも色々な光があり、朝日なのか真昼なのか夕方なのか、、ということで絵の雰囲気は断然違ったものになります。
まずはモノクロで陰影を描いてから色をつけていくカマイユ技法という描き方もあります。
それが木々であっても人物であってもともかく明暗の違いのみで捉えます。
自分がこれから描こうとする風景の写真をスマホの中で白黒にしてみるのも良いかもしれませんね。
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油絵 風景画の描き方 単純化・抽象化してみる
モネの絵は晩年にいくにしたがって一層単純化されタッチのみで睡蓮を表わすようになっていきました。
目の病気ということもありましたがこれが抽象絵画の始まりとも言えます。
はっきりと描くことは写真でもできることですから思い切って単純化してみるのも面白いかもしれません。
でも意外と難しいものですね。モネはやっぱり天才と思います。
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ピサロのこの絵は家や木々が象徴的に描かれていてい色の配分も意識して平面構成のように仕上げられています。
上のほうに水色があるから下のほうにも入れてみる、、といったようにそのものの色を忠実に再現したというよりは自由な色使いで描いているように見えます。
絵はどのように描いても自由ですね。
思い切り遊んでみるのも良いかもです。
油絵 風景画の描き方 映り込みを描いて魅力的な絵に
風景画の良さのひとつに水に写りこんだ様子を描くというのがあります。
これは何とも魅力的で是非一度は描いてみたいと思うものですね。
この映り込み構図は同じ形が上下で繰り返されるので見る人にしっとりとした安心感と安らぎを与える効果があります。
油絵風景画でこの描き方をするときの注意点は実際の木や建物よりも少し地味な感じで全く同じに逆さまに描いてみる、もしくは少し長めに逆さまに描いてみる、、ということです。
そしてそれが乾いた後に水面の静かな波の横線を入れます。
初心者の方でも意外と雰囲気がでたりしますのでやってみてください。
まとめ
初心者の方が油絵で風景画を描くときのコツと注意点
1 縦横比の効果をわかっておく
2 地平線の位置によって何が言いたいかが違ってくる
3 モチーフはなるべく違った形や質感のものを組み合わせる
4 遠近法を使い分ける
5 光と陰影を統一する
6 思い切って単純化しても良い
7 水の映り込みで魅力的な絵にしてみる
以上7つのコツを紹介しましたが如何だったでしょうか?
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