絵を一生懸命細部まで描きこんでも構図が良くないと何が言いたいのか分からない、ということがあります。
構図は絵画の中で非常に重要な要素であると言えます。
つまり構図というのは自分が言いたいことが伝わるかどうか、自分が何を言いたいのか、によって決まってくるということですね。
なので構図は「絵画そのもの」であると言って良いかもしれません。
今回は構図や構成の基本的な考え方とその構図を使ったときの効果を全4回にわたって考え、まとめてみたいと思います。
参考図書:「構図エッセンス」(視覚デザイン研究所)その他
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縦型構図・横型構図
そもそも絵を縦型にするか横型にするか、それとも正方形のスクエア型にするかというところから悩ましいところです。
上は私の作品ですが最初から横長にするのもありだけど上下の黒が真ん中の主役部分を引き立てるかなと思って正方形型にしました。
上下アクリル、中の部分は油彩です。
水平線が入る構図の考え方
水平線はあらゆる線の中で最も基本的な線で静かで自然の広がりのようなものを表現することができます。
これは生徒さん作品ですが海と空の静けさと温かさのようなものが感じられます。
この地平線がどの位置にくるかによって言いたいことは変わってきます。
地上のことが言いたい場合は地平線を上のほうにして空の分量は少なめにします。
逆に空が描きたい場合は地平線を低めにして空の分量を多くします。
上の作品は下の部分の情報量の多さに比べて上の空の部分のシンプルさが際立っていてこの人がどちらかというと空に感動していることがわかります。
水平線が入っても縦型構図になるとちょっと緊張感のある絵になります。
これは以前うちの教室に通ってあって今は一人で大作を描いて県展などに出されている人の作品ですがこの絵には寂れゆく海辺の集落(故郷)に対する作者の深い哀愁とそこに住む人々に対する共感のようなものを描きたいという意識が感じられますよね。
垂直線の入る構図の考え方
これも生徒さん作品ですが垂直線のある構図は知的な強さがあるという考え方をします。
樹木を描く場合も垂直線のある構図になりますがその場合は強すぎないように樹木を少し傾けたり、枝葉を描いたりして和らげるようにします。
水平線と垂直線の組み合わせ構図の考え方
水平線と垂直線の組み合わせ構図は地平線と木々など自然そのものを表わします。
これは子どもの作品ですがそのことを端的に表しています。
子どもですから特に何も考えずに直観的に斜め線で縦横の緊張感を和らげていますね。
これはある美術作家さんの小さな写真作品ですが構図が気に入って購入しました。
これは意図的に水平垂直の効果を考えて撮ってあると思います。
横向きの形だけだと締まりのない画面になりますからね。
手前の縦の棒のようなのが微妙に上に向かって広がって少し傾いているところがあまりにも硬くなることを和らげています。
斜め線構図の考え方
これは生徒さん作品ですが斜め線が入ると画面にぐっと動きが出た構図になります。
また斜めの線が多くなるほど画面の動きは激しくなります。
ロボットの腹部を中心にした放射線構図という考え方もできます。
ロボットの足の線が剣と交差する方向の斜め構図になっていてかなり画面に変化がでると同時にバランスもとれた構図になっています。
曲線が入った構図の考え方
曲線構図はルノアールが描く女性の裸体像など通常女性の身体の丸みを表現したりすることが多いですが上の生徒さん作品では蛇のプラスマイナスの丸みの変化が却って恐ろしさを増しているような感じもしますね。
この考え方でいくとゴッホの「星月夜」の激しい渦巻曲線は強い感情を表わしていると言えます。
なので激しい感情を表現したいときは曲線を反復させて強調するような渦巻きのような構図を考えても良いかもしれません。
三角形の構図の考え方
正三角形構図の考え方
これも生徒さん作品ですが画面いっぱいの三角形はどっしりと安定感がありますがちょっと重すぎる感じもします。
それに比べるとこの作品は三角形が真下までは来てなくて少し上がっていて、しかも中が空洞に空いていたりするので三角形構図のもつ安定感と中空の軽快さが重なって爽やかな印象になっているという考え方をすることができます。
直角三角形構図の考え方
これは私がレッスン動画の為に簡単に描いた静物画ですが楕円と直角三角形の構図の組み合わせとも言えます。
視線を誘導するループ型の構図とも言えるかもしれません。
ナイフからスタートしてレモン、洋梨、ポット、瓶、貝という風に右周りに回って最後に一番大きくて重い感じの貝に行きつくという考え方です。
こういう場合一番大きくて重いものは右下に持ってくるのが安定した構図を作るコツとなります。
また丸いものが固まってどっしりと重い構図になっているところにナイフの斜め線を入れることで動きと緊張感を加えてみました。
丸い構図のなかの直線的な要素はアクセントとして有効です。
また逆直角三角形構図もあります。
これも比較的安定感のある構図になります。
逆三角形構図
上向き三角形のような重い感じはなく軽快な感じですが安定感は意外とあります。
この作品では真ん中にもう1本葉っぱを描き加えるともっと安心して見れるかもしれませんね。
それと関係ないですが植木鉢の底の楕円が左右対称になれば良かったかなと思います。
複合三角形構図
色々な形の三角形が組み合わされてできる複合三角形構図はそれによってリズムのようなものが生まれてきます。
最初に提示した縦型構図のこの作品も変則的な三角形の組み合わせですがこれがもし全部同じ形の屋根だったらこの絵の面白みは半減しますね。
菱形構図の考え方
菱形構図も三角形構図の変形です。
例えば髪の長い女性が足を組んで座っているところを真正面から描いたりするとこの菱形構図となります。
以外と安定がよくしかも軽快な効果があります。
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対角線構図の考え方
対角線というのは斜線の中で最も落ち着く角度と言われています。
四角形の真ん中の点を決めるときには対角線を引きます
これは子どもの絵ですが対角線上に麦と稲を配置して安定感のある構図になっているという考え方をすることができます。
また対角線の片方だけを用いた構図には古来から女性のヌード作品があります。
ゴヤの「裸体のマハ」やモジリアニの「白いクッションに横たわる裸婦」などです。
女性の裸体を安心して見れる、一番美しく見れる構図という考え方をすることができそうです。
パノラマ構図の考え方
広々と上から全景を見下ろしたパノラマ構図では一望のもとに世界が展開されていてこれも大変物語性が感じられ、これは古典から繰り返されてきた代表的な構図です。
またこの構図は全体を俯瞰して客観的に見ることが出来るので逆に知的な説明図にも利用されます。
これは子ども生徒さん作品ですが上から俯瞰して見た構図でカタツムリの世界を描いています。
あちこちでカタツムリの色々な様子が展開されていて物語性がありますね。
これも最初の海辺の風景を描かれた方の作品ですが上から見下ろした構図になっていて低い視点から見た街の様子とはまた違った見え方になっています。
ふちどり構図の考え方
額縁様式によるふちどり構図の考え方
これは子ども作品で実際に油絵の木枠に絵を描かせていますが額縁のような安定感があり中の絵を際立たせています。
絵の中で四隅を少し渋めにすると絵が落ち着くというのがあるのですがこの場合周りは中の鮮やかな青に比べて地味な木の色です。
ふちどり様式にはこのように天地左右の4辺をまるで額縁のように一定のパターンで描くやり方とカーテンやアーチ型の門、樹木などで自然に縁どる方法があります。
自然体の縁取り構図の考え方
これはアンリ・ルソーの「結婚式」という絵ですがアーチ型の樹形で縁取りされた家族の記念写真の場を描いています。
地味な樹形のアーチに囲まれた家族の中の特に花嫁の白に自然と目がいき、安定感があります。
アンフォルメル・均一な分布構図の考え方
アンフォルメルな具象的構図の考え方
これは毎年私が子ども生徒さん達にやってもらう滲み絵ですが物をあまりはっきりと説明的に描きこむことなくボヤっとした感じになるのが却って魅力的で見る人の想像を喚起します。
また油絵では絵の具の色やタッチの美しさを自由に表現することに価値をおくやり方になります。
均一な分布構図の考え方
ミロの絵は抽象的な形があちこちに浮かぶように配置されていたりしますがこの絵も画面一杯に食べ物が描かれていて、特に中心といえるものがありません。
軽快で散漫でとりとめのない画面ですがひとつひとつ見ていくとなかなか興味をそそられます。
この人は以前うちの教室に子ども生徒さんとして通ってあったのですが今は障がい者の制作工房に所属してポストカードなどのグッズが売られています。
こういうのはオールオーバー絵画と言われたりしますがアメリカ現代美術のなかではジャクソン・ポロックの抽象画もこの構図の考え方になります。
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今回はごく基本的な構図の考え方をおおまかに8種類書いてきました。
絵の構図や構成に関する考え方や効果的に見せるための決まり事のようなものはまだ沢山ありますがとりあえず今回のまとめとしては・・
■絵の構図の考え方の基本は「いかに言いたいことを効果的に伝えるか」ということ
■横型構図は自然の広がりを表現するのに向いている。これに対して縦型は緊張感と意図のある構図となる。
■水平線の高さによって言いたいことは違ってくる
■水平・垂直の組み合わせ構図は自然そのものを表わすので安心感がある
■斜め線が入る構図は動きがでるという考え方をする。
■曲線構図は女性の身体など柔らかい雰囲気を出すのに良いという考え方をするが渦巻は激しさを強調することもある。
■三角形構図は正三角形、逆三角形どちらも安定感があるという考え方をする。
下が広い三角形の場合は重くなり過ぎないように中空にするという考え方もある
■直角三角形構図の場合右下に大きくて重いものを持ってくると安定が良い
■色々な形をした複合三角形構図はリズム感がでる
■対角線構図 古くから安定感があるという考え方で女性のヌードなどに用いられてきた
■パノラマ構図は物語性があり、また逆に客観的に物事を伝えることにも役に立つという考え方
■縁取り構図は安定感があり中の絵を際立たせる
■アンフォルメルな構図は特に対象を詳しく説明しないが雰囲気のある魅力的な画面になる
■中心の無い均一な分布構図は軽快で散漫、とりとめのない感じだが全体で何かを感じることがある
以上基本的な構図とその考え方、効果的な使いかたを書いてきましたが次回この続きを描きます。
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