絵画やイラストを具象的に描くときには遠近法が欠かせませんね。
そもそも遠近法とはどういうことでしょうか?
それは3次元の空間を2次元の平面に置き換えるときにその空間の中にある物の前後感や距離感を表わすことを言います。
写真では何の抵抗もなく見れる風景でもいざ絵画やイラストに描くとなると殊更に「遠近法」を意識して描かないとうまく前後感がでなかったりあまり距離を感じなかったり、遠くのものが遠くにあるように見えなかったりします。
わかりやすく言うと写真と絵とは全く別物で絵画やイラストで空間を表わすにはそれなりの技術・技法が必要ということです。
でも一口に遠近法の技法と言っても色々な種類のものがあります。
ここでは主な7種類の遠近法についてわかりやすく解説します。
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近景・中景・遠景を描き分ける遠近法をわかりやすく
物の大きさを変える遠近法をわかりやすく
これは私が油彩で木々の前後感を表わすために5つの段階の地点のものを描いてみたのもです。
外の風景を眺めてみると近くにあるものは大きく、遠くにあるものは小さく見えます。
わかりやすく言うと絵画やイラストで風景を描くときは基本一番手前にある「近景」は大きく、中くらいの距離にある「中景」は中くらいの大きさに、一番遠い「遠景」は小さく描きます。
地平線に近づくほど物は小さくなります。
子どもの頃はこの空間認識能力が発達していないのでこの描き分けは難しいのですが段々脳が発達してくるに従ってこの描き分けが出来るようになってきます。
物の描きこみ方を変える遠近法をわかりやすく
これは私が描いた「雲のある風景」ですが遠近法の基本に従って一番手前のほうは詳しくはっきりと、中くらいのところは中くらいの描きこみ、遠くなるほどぼんやりさせています。
絵画やイラストの基本は一番手前にあるものをはっきりと詳しく描きこむということです。
明るい部分と暗い部分のコントラストも強くします。
人の目は詳しく描きこまれたところにいきますので中景との差をはっきりとつけます。
写真ではこの差があまり感じられないことが多いです。
ですが絵画では遠くになるほどコントラストは弱く、描きこみもユルい感じにします。
これは5番目にくる空気遠近法にも通じます。
つまりわかりやすく言うと近景は「大きくはっきりと詳しく」中景は「中くらいの大きさでそれほどはっきり詳しくは描かない」遠景は「ぼんやりとうすめ色で描く」ということですね。
X型遠近法(線遠近法)をわかりやすく
消失点に大事なモチーフをもってくる遠近法
X型遠近法(線遠近法)はイタリアルネッサンスの頃、ブルネレスキやアルベルティが考えだしたものを後にフランチェスカやレオナルド・ダ・ビンチが理論的に確立したものです。
これは一般に透視図法と言われるもので中央の消失点に向かって次第に建物の窓などが細く小さく見える、という絵を描く時などに使われます。
規則正しく並ぶ街路樹や柵などを描く時もこれを使いますね。
この方法は後のヨーロッパ絵画の厳然たる基本となり、これに反しているものは絵画ではないとまで言われるほどでした。
これに対して日本の絵画は全く別の遠近法を用いていたので印象派以降の画家達に多大な影響を与えました。
また逆に日本では西洋の技法を取り入れるということが盛んにおこなわれるようになってその後浮世絵のなかにもこの線遠近法が使われるようになっていきました。
江戸でこの遠近法が流行して葛飾北斎や歌川広重などの絵の中に多く用いられています。
文化というのは交流するものですね。
レオナルド・ダ・ビンチの最後の晩餐は正確な線遠近法(透視図法)で描かれています。
一般にこの線遠近法では奥の消失点に一番大事な魅力的なモチーフを持ってきます。
そこは見る人の注目が集まるところなのでそこに大事なものを置くことによって絵が安定したものになります。
わかりやすく言うと奥の消失点は絵画を見る視線が最後に集まるところ、というわけです。
X型遠近法は繰り返される
ですがこの線遠近法は限りなく規則性に従って変化していくものではなく実際は手前にくるほど変化はゆるやかになりやがて水平に近くなってまた逆になっていきます。
このイタリアの絵ハガキは上の図を具体的に表しています。(少し極端ですが)
手前にくるほど変化がゆるやかになっています。
そして自分のいる地点で一度真っすぐになります(私の図はいまいち真っすぐではありませんが・汗)
机の上にある立方体の箱のようなものを描こうとするとまさにそこが自分の地点なのでどこもきれいに平行に見えます。
ですがそれを正直に平行に描いてしまうと今度は逆に広がって見えてしまいます。
上の図は某冷蔵庫の会社の取説ですがこれは実はすべて平行に描いてあります。
でも向こう側が広がって見えますよね?
人間の目って不思議ですね。
なので目の前にあるものはたとえ全て平行に見えても嘘でもいいのでほんの少しだけパースをつけて描くようにします。
これは生徒さん作品です。
これはちょっと下の部分のパースつけすぎたかな、、とも思いますが、、あまり極端にならないように気をつけましょう・汗・笑・
消失点を隠して含みを持たせる応用線遠近法
消失点に大事なモチーフを持ってくるのはとてもわかりやすい線遠近法ですがわざと消失点を隠して絵に含みを持たせる方法もあります。
この先何があるのだろうと想像させますね。
これは今から20年前に私が北海道苫小牧でバスの一番前に座ってバスの中からスケッチしたものですがそう意識することなく道の先はどうなっているのだろう的な絵になっていたと思います。
カーブ型遠近法をわかりやすく
C字型遠近法をわかりやすく
ゆるやかにC字型のカーブを描くことによって遠近感をだす方法をC 字型遠近法と言います。
これは子ども生徒さん作品でハロウィンの絵なのでちょっと不気味ですがお天気の良い昼間の風景でこのC字遠近法を使うととてものどかな感じをだすことができます。
わかりやすく言えばゆるやかなカーブが絵画やイラストを見る人に安心感をもたらす感じですね。
ですがこののどかなC字型遠近法に直線の要素が加わるとぐっと緊張感の増した絵画やイラストになります。
これも生徒さん作品ですがゆるやかなカーブの道と空の柔らかな雲に建物の縦の直線や屋根の三角の要素が加わって画面に力強い緊張感を与えていますよね。
左の曲線の看板もアクセントになっています。
S字型遠近法をわかりやすく
ゆるやかにS字を描くことによって遠近感をだす方法をS字遠近法と言います。
この場合わかりやすく言うと手前にあるものほど高いアングルで見ることになるので丸いものは正円に近くなり、遠くにいくほど丸いものは楕円になっていきます。
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ジグザグ型遠近法をわかりやすく
地上のジグザグ遠近法
例えば風景を描くときに畝が連なっているときなどこのジグザグ遠近法になります。
近景の陵線を斜線で描き、中景はその反対方向の斜線で描く。こうしてジグザグ型の線で遠方まで描いていくと確実に遠近感が出しやすくなります。
この手法は西洋絵画にはよく見られる特徴です。
さっきも引用したこの絵も遠景から畝の違いを意識して描いています。
空の雲にもジグザグ遠近法を使う
空にも近景、中景、遠景があります。
手前にある雲は大きく、中くらいの距離にある雲は中くらい、遠くにある雲は小さく描きます。
空の雲を描くときもこのジグザグに沿って描くと空の距離感を出すことが出来ます。
デッサンの影にジグザグ遠近法を使う
また鉛筆で静物画デッサンを描くときに物の影の部分をこのジグザグを意識して描いていくと画面の中の距離感を出すことができます。
わかりやすく言うと斜めの線の重なり、ハッチングで影を描いていくということですね。
空気遠近法をわかりやすく
空気遠近法とはわかりやすく言うと「大気の色を反映させた描き方」です。
空の色が晴れて青い場合は遠くにいくにしたがってその景色の色は青く見えます。
上の絵はレオナルド・ダ・ビンチの「岩窟の聖母」ですが背景は青く描かれています。
この空気遠近法はルネッサンス期にレオナルドによって確立されました。
そういえば富士山が青く見えるのも大気の色を反映しているからなんですね。
また遠くにいくほどその風景・対象物は大気とのコントラストが弱くなります。
なので最初に書いた近景・中景・遠景を描き分ける方法もこの空気遠近法に基づくものですね。
遠くにあるものほどぼーっと霞んで見えますのであまりはっきりと描かないようにします。
下の鉛筆デッサンのグラデーションでわかりやすく説明してみましょう。
近景ははっきりと詳しく描きこみ、明るいところと暗いところのコントラストも強いので下の
図では一番左の1番目から一番右の11番目まであるということです。
中景になると左から3番目から8番目くらいまで。
遠景になると左から4番目から6番目くらい、、といったところでしょうか。
遠くになるほど中のほうのうすめの色合い、柔らかなトーンで描くということですね。
色彩遠近法をわかりやすく
これは私が色鉛筆で赤と青を塗り分けたものです。
真ん中が飛び出して見えるのはどちらでしょうか?
一般に青のような寒色のなかに赤のような暖色があると真ん中の部分が飛び出して見え、反対に赤のような暖色の中に青のような寒色があると中央の部分が奥に沈んで見えます。
このように色で遠近を表わすことを色彩遠近法と言います。
上の空気遠近法もこれの応用と言えるかもしれません。
手前の人物の肌の色や土の色は暖色系ですが背景は遠くにいくほど青みがかってきています。
東洋的遠近法をわかりやすく
東洋では西洋とはまた違った遠近法がありました。
宋の時代に確立した「三遠」という考え方は理詰めの西洋合理主義とは違い、観念的、感覚的、思想的でした。
それは
1高遠 : 高く仰ぎ見る、高尚で遠大な理想点
2深遠 : 向こう側を見通す
3平遠 : 水平の広がりを見る
といったことを縦の画面のなかで表すというもので上の田中一村の一番右側の「山水図」をみればわかりやすいと思います。
上のほうに描かれている山が遠くにあることを表わしています。
しかもその山をなにか高尚で尊いものとして仰ぎ見ているような想いが感じられます。
とても思索的ですよね。
西洋と東洋では根本的に考え方や表現の仕方が違いますね。
まとめ
遠近法とは、わかりやすく言うと3次元の空間を2次元の平面に置き換える時にその前後感や距離感をいかに表わすかという絵画技法のことです。
そのなかで主な7種類を解説してみました。
1近景・中景・遠景を描き分ける方法・・まずは初心者の方はこれを意識して描いてみましょう
2 X型遠近法 線遠近法とも言われています。中央の消失点に向かってモチーフは小さくなっていきます。消失点に魅力的なものを置くと絵が安定します。
3 カーブ型遠近法 C字型遠近法、S字型遠近法など。緩やかなカーブがのどかさを表わします。
これに直線的な要素が加わると緊張感のある構図になります。
4 ジグザグ型遠近法 畝、陵線にそってジグザグに視線を誘導することで確実に遠近を表わすことができます
5 空気遠近法 モチーフは遠くに行くほどぼんやり霞み、大気の影響を受けた色になります。青空のもとでは青く見えるようになります。
6色彩遠近法 寒色の中に暖色があると飛び出して見え、暖色の中に寒色があると凹んで見えることをいいます。
7 東洋的遠近法 宋の時代に確立された「三遠」という思想的、感覚的表現方法のことを言います。
以上遠近法についてわかりやすく説明してきたつもりですが参考になりましたでしょうか。
以下構図についてのブログも是非ご覧ください。
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