私たちの身の周りには円錐形のものが意外と沢山あります。
鉛筆の先もそうですね。
はっきりとした円錐形でなくても円錐が途中で切れた形だったり要約すれば円錐に見えてくるということもあります。
鉛筆デッサンで円錐の描き方を練習していれば自然と身の周りにあるものを単純化して見ることが出来るようになるかもしれません。
今回は鉛筆デッサンで円錐を描く時の手順と初心者の人が失敗しやすいポイントを押さえながら解説していきます。
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鉛筆デッサン 円錐の描き方~四角柱の一点透視図で考える~
鉛筆デッサンで円錐を描くときはまずそれを取り囲む正四角柱のことを考えます。
これは正四角柱とそれに入りこむ円錐を真上から見たところです。
鉛筆デッサンをするときは何を描く時でもいつも自分がシンプルな角柱を削りこんで彫刻をするつもりで描いてみましょう。
円柱もそうですが円錐も同じように正四角柱を削りこんでいくと考えます。
なので円錐の中心は角柱の中心でもあります。
円錐の頂点は正四角柱の対角線が交わった中心点でもあります。(赤のa)
角柱のことを考えるときは1点透視図を描いて考えます。
一点透視図については目次最後で解説しています。
より深く理解したい人は最後まで読んでください。
鉛筆デッサンで円錐を描くときには上から少し見下ろした形で描くことが殆どだと思います。
上から円錐を見下ろすと下に楕円があります。
円柱と同様目線が上に上がるほど下の楕円は正円(まん丸)に近づいていきます。
円柱を描くときと同様まず楕円の長径(赤の横線)を描いてその中心から垂直に縦線(正中線)を引きますがこの「長径」は円(正四角柱の上下の面)の中心点aを通る線ではありません。
鉛筆デッサンで円錐を描くときはまず円錐を見下ろしたときのみかけの楕円を描くことになりますがこれは長径の半分のところから垂直に伸びる中心線の長さ(短径)がどのくらいなのかを考える必要があります。
理屈的には正四角柱の透視図のなかに存在する円錐なので底辺の台形に沿った楕円ということになりますがここでは台形を気にすることなく短径の半分のところに長径が垂直に交わっているという「普通に左右対称な楕円」を描きます。
最初にこの左右対称な楕円が描けるかどうか、中心線が垂直に描けているかがとても重要なポイントとなります。
鉛筆デッサンで実際に円錐を描いてみる
鉛筆デッサン 円錐の描き方 ~底の楕円と全体の四角形を描く~
上で説明しましたように底の楕円を描くときは1点透視図の底の台形を気にすることなく楕円の長径と短径が垂直に交わるようにして左右対称な楕円を描きます。
まずはB系の濃い鉛筆を長めに持って寝せるようにして鉛筆の腹の部分でアタリをつけていきます。
このとき紙を縦にしたり横にしたりしてきれいに左右対称な楕円になっているか確かめることが大切です。
また楕円のかたちそのものを見るよりも周りの黒い部分の形をみるほうが狂いが分かり易いこともあります。
またこの時点で円錐の下から上(頂点)までがどういう四角形のなかに入り込むかという縦横比を確認しておおまかな四角形を描いておきます。
これは何を描くときでも重要なことです。
鉛筆デッサン 円錐の描き方 ~頂点と楕円を結ぶ線を入れる~
次に円錐の輪郭線を入れてみます。
円錐の頂点から下の楕円に向かって線を描きますがここで注意したいことは円柱のように長径の端に交わるのではなく、もう少し上のほうで楕円となだらかに繋がるようにするということです。
上の図で黒い●をつけているあたりです。
長径の端に向かって線を引いてしまうと三角錐の底面の端がカックンと尖ってしまいます。
少し上から見下ろした円錐というのは向こう側の回り込みの部分が少し見えるのです。
そして目線が上になるほど(見下ろす度合いが大きくなるほど)回り込みの部分は沢山見えるということになってきます。
鉛筆デッサン 円錐の描き方 ~下描きの線を消して円錐の表面を白くする~
ここで下書きの線を消して円錐の表面を白くしますが全体の縦横比が大幅に狂ってないかここでもう一度確認しておきましょう。
細かい修正は後でも良いですが8割がた正解という感じにしておきます。
修正するときは間違えた線は残したまま修正し、間違えた線は後で消すようにします。
1発でかたちが正確にとれることはないので描いたり消したりしながら整えていきます。
鉛筆デッサン 円錐の描き方 ~不要な線を全て消してかたちを整える~
ここで不要な鉛筆の線を全て消して円錐の形にします。
消しながら形を整えるという気持ちで描きます。
時々離れて見ながらバランスを整えていきます。
鉛筆デッサン 円錐の描き方 ~円錐の表面に陰の線を入れていく~
陰の線を円錐の表面に沿って入れていきます。
大きく△に分けるような感じで色分けしていきます。
ここでははみだすことを気にせずに大きく腕を動かすような気持ちで線をひいていきます。
はみ出した分はあとから消せばよいです。
はみ出さないように線を引いていたら下のほうで鉛筆が止まって濃くなってしまいます。
また陰影を入れながらかたちの狂いも直していきます。
鉛筆デッサン 円錐の描き方 ~影も同時進行で描いていく~
下からの反射光を意識して上のほうのコントラストを強くします。
また光源とは反対側に地面に沿った「影」ができますので円錐の影の部分も描いていきます。
影もモチーフの一部と考えて一緒に描いていきますがそういう意味では円錐の位置がもう少し向かって左でも良かったかもしれません。
円錐の表面に沿った横の線も入れていきます。
ここで一度ティッシュやガーゼでこすって鉛筆の粉を画用紙に馴染ませます。
鉛筆デッサン 円錐の描き方 ~筆圧を強めてコントラストをつける~
鉛筆の線を段々濃くしてグラデーションの差をつけていきます。
円柱と違って三角形のかたちに明るさ(暗さ)を変えていきます。
頂点の部分はそれなりに濃くして良いと思います。
また影の際ぎわの部分はかなり濃くして良いと思います。
回り込みの部分も丁寧に描きます。
練ゴムで消しながら輪郭を整えます。
一番左端の部分が明るくなると輪郭線が必要になってくるので一番明るい部分は端より少し中に入った部分になるようにします。
どうしても一番端が明るい場合は背景の色を塗ることによって「輪郭線を感じる」ようにします。
また右からの反射光もありますので一番暗い部分も右端ではなく端から少し入った部分になります。
反射光は明るくなりすぎないように注意しましょう。
ここでは最後までB系の鉛筆で描いていますがH系の鉛筆に持ち替えて再度かたちを起こしながら彩度を上げていっても良いです。
細かいところで塗り過ぎたところは擦筆(さっぴつ)や練ゴムで調整しながら描いていきます。
鉛筆デッサンで円錐を描くときに間違いやすいポイント7つ
20年以上教室をやってきて色々な人に鉛筆デッサンで円錐を描いてもらいましたが
皆が共通して間違いやすい点があることに気付きました。
円錐の正中線が傾く
まだ中学1年生になって鉛筆デッサンを始めたばかりなのでこれからですが、楕円の端と端を結んだ線が傾いています。
それに沿って中心線も傾いてしまっています。
円錐の楕円が左右対称でない
陰影は丁寧につけていますが肝心の底辺の楕円が左右対称になってないのが残念ですね。
一番最初にしっかりと楕円のかたちをチェックするようにしましょう。
中心線も若干右よりになっているようです。
円錐の楕円の角が尖っている
円柱でもこれは気をつけないといけないのですが円錐になると尚更気をつけたいところです。
この人は一応周り込みは描いていたのですが端の微妙な影を描いた為にカックンとしているように見えてしまったというのもあります。
石膏の質感はよくでていますね。
円錐の輪郭線が目立つ
これもグラデーションの描き分けは結構良くできているのですが一番端を明るくしたので輪郭線を描く必要に迫られてしまいました。
西洋絵画は基本輪郭線を描かずに「面」で描くようなところがあります。
日本の浮世絵や漫画は「線」で描きます。
どちらが良いという話しではないのですが鉛筆デッサンや石膏デッサン、油絵といった西洋由来の絵画は輪郭線を描かずにぼかすというのが基本です。
その極みがレオナルド・ダ・ビンチのモナリザです。
あれは油絵のスフマート技法で究極のぼかしを試みています。
*水彩画は線の面白さをだすという技法もあります。
円錐の表面にグラデーションの幅がない
うちの教室では鉛筆デッサンの最初の練習としてグラデーションの描き分けをしてもらうのですがいざ実践となるとそのことを忘れてしまう人がいます。
この人もやり始めてすぐの頃だったのでこうなってますが今はだいぶ描き分けが出来るようになってきました。
今2段階という感じなのでせめて3段階グラデーションの描き分けが出来ると良いですね。
円錐の一番明るい部分を練り消しで取ればだいぶ良くなると思います。
円錐の質感が表現出来ていない
この人も中学1年生で鉛筆デッサンを始めたばかりなのでまだ今からですがこれは石膏と言うよりもフェルトのような質感になっています。
円錐の下のほうが濃くなり過ぎたのも修正したいですね。
面に沿った真っすぐな線が引けていない
これもこの生徒さんが中学生の頃描いた鉛筆デッサンで今は高校生になってだいぶ上達しましたが円錐の面に沿った真っすぐな線が引けてなかったですね。
真っすぐな線を引きたいときは腕ごと手を動かすようにすると上手くいくことが多いです。
鉛筆デッサンで円錐を描く~1点透視図について~
鉛筆デッサンで円錐を描く~1点透視図法とは~
鉛筆デッサンで円錐を描くときは正四角柱の透視図の中で考えると言いました。
鉛筆デッサンをするときは1点透視図、2点透視図、3点透視図というのを理解しておかないと全てのことが的確に表現できないことになります。
そもそも「透視図」というのは自分の目の前に大きなガラス板を立ててそれに向こう側の透けた世界を描くようなものです。
上の図の一番下の線が硝子板が立っている位置です。
上の図のSPというのはStanding Pointの意味で自分が立っている位置です。
VPというのはVanishing Pointの意味で日本語で言えば「消失点」です。
これは下から2番目の線=自分の目の高さ上にあります。
自分の目の高さが高いと角柱の上面はより見えやすくなります。
1点透視図というは本来平行であるはずの角柱の両サイドの線を伸ばしていくと
見た目上では1点に収束する、という描き方のことです。
実際そのように「見える」からです。
これが遠近法に繋がります。
近くにあるものは大きく、遠くにあるものは小さく見えます。
2点透視図ではこの消失点が2つになります。
これはこの角柱を斜めに置いた場合に消失点が2つになるということです。
1点透視図上で角柱を見たとき角柱の上の面はより目線の高さに近いのであまり見えないという感じになりますが下の面(底面)は見下ろす感じになるのでより正方形に近くなります。
なので角柱を削りこんだかたちである円錐の底の円はより丸みのある円になります。
因みに円柱や円錐の場合は角柱を斜めに置いて消失点が2つになったとしても究極まで削り込んだかたちなので1点透視図上の円柱や円錐と見え方は変わらないということになります。
鉛筆デッサンで円錐を描く~透視図法の歴史~
透視図法は15世紀ルネッサンス期にイタリアで確立され、その後急速にヨーロッパ中に伝えられました。
それ以前の中世の絵画ではそのへんが曖昧で子どもっぽい絵が多く見られます。
なのでヨーロッパではルネッサンス期以降は遠近法や透視図法を無視した絵は絵ではないとまで考えられるようになりました。
日本の絵画も古くは遠近法や透視図法を無視していましたが江戸時代に西洋からこの技法と考え方が伝わると浮世絵師達も意識せざるをえなくなったようです。
現代では「建築パース」という言葉があるように建築の出来上がり図や部屋の中の図もこの透視図法に従って描かれています。
これも以前は100%手描きされていましたが今はコンピューターで作図されています。
まとめ
・鉛筆デッサンで円錐を描くときは円柱同様正四角柱の透視図のなかにあるものとして理解する
・実際に描くときはまず底円の楕円の長径の半分のところから垂直に中心線を引く
・円錐の底円の楕円を描く
・円錐の頂点=正四角柱の中心から下の楕円に向かって輪郭線を引く
・輪郭線は下の楕円となだらかに合流するように描く。
・少し上から見下ろした円錐を鉛筆デッサンで描くときは回り込みの部分が見える
・全体の縦横比を計って間違わないようにしておく
・反射光を意識して描く
・円錐の面に沿った縦線は大きく腕を動かしながらはみだすのを気にぜずに引く
・練ゴムで消しながら円錐の形を整えていく
以上参考になれば幸いです。
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